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直下率2の続き

 
 直下率=耐震性?
 
 広いLDK 耐震性劣る?
 
 
 
 
 
 
 
 

 
あくまで意匠屋の『私見』とお断り申し上げて


 倒壊された住宅は、
 一見して二階の載りが芳しくないという印象
 
 『二階の載り』の意味
 鉄骨造やRC造の建物は、
 一階から最上階まで柱が基本的に通し柱のように同位置にあります。
 この事は構造的な基本で木造も同様です。
 梁の中間から二階柱が建つという事は、構造的イレギュラーなのです。
 架構計画に於いて
 主たるグリッドは
 木造の梁の場合 一般的に定尺4mなので
 4m×4m 弱の正方形平面が最大グリッドとなり
 その四本の隅柱(主柱)が通し柱の様になるが基本となります。
  (もちろん長尺梁を使用すれば それ以上可能ですが
   一般論の話としています。)
 
 二階柱の隅柱は、(二階外壁の入り隅、出隅の柱)
 一般的架構計画の場合
 必ず主柱となるので一階部分に柱がある事は『載り』の基本のひとつです。
 
 更に二階辺長4mを超える場合は、
 主たるグリットの分割が必要となります。
 例えば 10m×7m の二階の場合
 最低で6グリット 長辺4本×短辺3本=12本 がグリッド主柱となり
 一階に柱がある事が『載り』の基本の二つめです。
 
 
 わかりやすく表現すると
 ひとつめは、二階外壁下に一階の壁があるかどうか
 二つ目は、二階内壁(主たるグリッド)の下に一階の壁があるかどうか
 
 あくまで架構計画(梁のかけ方)前段で見るポイントです。
  (主たるグリットは、村上先生が仰っている構造グリッドと
   同じ意味で使用しています。
   ただ木造の場合、柱が沢山ある為どの柱が大切かを認識し難いので
   あえて表現を変えています。)
 
 木造が他の構造と大きく違う点は、
 主たるグリッドの四本柱架構では、
 構造的に水平力に抵抗できない事となっています。
 その為、各辺に耐力壁が必要となり
 それを構成する副柱が必要になります。
 耐力壁を主柱と副柱で構成しても良いですし
 副柱二本で構成しても良いですが
 主柱四本 副柱四本の組み合わせは、必要最低限の本数です。
 先程の例で
 副柱は、グリットの辺の数となるので
 長辺3本×3列+短辺2本×4列=17本が最低限の副柱本数で
 一階に柱がある事が『載り』の基本の三つめです。
 
 わかりやすく表現すると
 二階耐力壁下に一階の壁が有り柱が同位置にあるかどうか
 特に二階外壁下の柱位置は、重要です。
 
 以上『載り』の基本を書きましたが
 あくまで基本的な考え方で
 そうした方がよりベターと解釈して下さい。
 実際は、全てを満足させることは難儀で
 希望するプランとの兼ね合いで何をイレギュラーとし
 意匠と構造計画することが大切です。
  
  
  
 倒壊された住宅の話に戻ります。
 『載り』の観点から
 A棟
 二階東面外壁が一階の室内部分であるイレギュラー
 二階外壁下の一階の耐力壁は、
 二階の受ける水平力をダイレクトに抵抗するので
 耐震性重視ならば計画したくないプラン。
 
 B棟
 二階内部主グリッド壁下が一階の室内部分であるイレギュラー
 この住宅は大きいので二階外壁が一階とほぼ揃っていても
 二階内壁の下に一階壁がほぼないことが気になるプラン
 特にあるべき所に柱がない(重要)
 こちらのプランは、もう少し構造計画し直せる機会があったとするならば
 何とかなりそうなプラン。
 
 両棟
 下屋(二階外壁ラインより外にある部分)があります。
 この部分が曲者で建基法に仕様規定がありません。
 実際の力の流れを考えれば構造的配慮が必要な部分
 特にA棟の様な場合 
 二階耐力壁が受けた力を平面的に一階耐力壁に伝える
 水平剛性を考慮する必要があります。
 
 
 まとめ
 壁の直下率は、総二階の場合
 どのように計画しようが外壁の占める割合が大きいので
 高い数値となり
 壁内にある柱の直下率も必然的に高い傾向となります。
 だから耐震性も上がる?
 B棟 総二階に近いのに倒壊していますよね?
 
 放送された中で広いLDKが原因?
 B棟LDK 約4p×10p
 (pは、木造で言う基本グリッド 2間×5間)
 健全だった住宅C棟LDK 4p×8p
 4p×2p分小さいですがメーターモジュールなので
 広さ=面積とすればB棟尺モジュールの面積と
 1㎡ほどの違いでしかありません。
 
 何となく直下率も広い空間も耐震性の主要因でなく
 サブ要因の様な気がしませんか?
 
 そこで『載り』で書いた事項の柱直下率を計算してみました。
 但し、伏せ図がないので『載り』の二つめは
 当方がプラン変更せず最善の方法
 村上先生の課題の様に考察したので
 実際との相違があると思われます。
 (その直下率が高くなる様に検討する為)
 A棟
 一つめ 二階外壁柱の入り出隅の直下率 100%
 二つめ 二階の主グリット柱の直下率 80%強
 三つめ 二階の主柱と副柱の直下率 50%
 B棟
 一つめ 二階外壁柱の入り出隅の直下率 80%強
 二つめ 二階の主グリット柱の直下率 80%強
 三つめ 二階の主柱と副柱の直下率 50%強
 C棟
 一つめ 二階外壁柱の入り出隅の直下率 90%
 二つめ 二階の主グリット柱の直下率 90%強
 三つめ 二階の主柱と副柱の直下率 80%弱
 C棟は、一階に柱無し部分が一つめと二つめで同一柱
 二階出隅柱1本だけです。
 且つ その柱は、一階両柱間1pの中央部に載っていることを補足します。

  
 この結果から何か見えてきませんか?
 単に直下率が高ければ良いだけでなく見るポイント
 三つめではないのかな?
 本当は、二階耐力壁下壁直下率も計算しようと思ったのですが
 面倒いので止めました・・・悪しからず。
 (私見的には、柱の方が大切)
 
 
 
 
 
 直下率に関しては、
 高い方が耐震性を高める効果がありそうですが
 直下率=耐震性とならない可能性もありそうです。
 耐震性の主要因となるものは、耐力壁の量と建物余力等々
 掲げればキリがなさそう
 
 
 どの先生が仰っていたか記憶が定かでないですが
 九州地域の特性 耐力壁=筋違い が多いらしいです。
 筋違いの耐力壁は、変形量が大きいと座屈し
 脆性破壊しやすい特性を持ちます。
 又、その箇所以外 サイティング(金物仕様)等の外壁の場合
 開口部の垂れ壁や腰壁部分に余力を期待出来ません。
 「変形量を抑える」は「壁量を増やす」に繋がるので
 筋違いのみの場合は、壁量に相当な余裕が必要と考えます。
 
 
 先程の比較した住宅
 C棟の耐力壁は、面材と筋違いの混合
 A・B棟の耐力壁は、筋違いのみの構成
 壁量の違いがあるので単純な比較となりませんが
 建物余力に関しては、C棟に軍配が上がります。
 (倒壊してないですしね)
 又、C棟は、広い空間を確保しながら
 今回の地震で被災しなかった事を鑑みれば
 広い空間により
 耐震性が劣るとは一概に言えないのではないでしょうか?
 
 施工面からすると
 佐藤先生の講義のA棟の解体調査では
 建基法仕様規定に抵触する様な事象がない事を仰っています。
 この年代に建てられた住宅は、
 他の法制度も施行されている事を付加すると
 建基法の仕様規定に抵触する施工があったとは考え難いと思います。
 推論ですがB棟も抵触していないのではないでしょうか?
 
 
 熊本地震の調査報告の中で建基法の法改正がない流れにあるので
 仕様規定に基づいた施工でも
 仕様規定の仮定条件に合わない住宅は、
 それだけでは倒壊する恐れありと地震で物語っていませんか?
 (以前から警鐘されていたことですけど)

 今回の地震は、
 建基法の極希地震が二度あった事
 建基法では、一度の想定
 
 そこで住宅の設計をどうすれば良いか
 基本に立ち返り
 五十田先生が仰った『設計・構造計画』と『正しい施工』
 更に何をすれば良いのか
 個々の設計者が考える時かもしれません。
 
 
     おしまい




  終わりに
  この地震で被災されました皆様に心からお見舞い申し上げます。
  又、色々と大変な時期に自邸の資料等を提供して頂き 
  間接的ながら感謝申し上げると共に
  今後良き住宅が建つ事を切に願うことを申し上げます。
 
 
 
 
 
 
 
  
 

| 建事一考 | 08:22 PM | comments (0) | trackback (0) |

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